風邪はつらいよ(???の場合)
リーと連れ立って、笛吹のお見舞いに行こうとしていたブレイズは、笛吹の部屋の前に突如現われた銀髪の男の変死体(仮)を見て、うえーっと後ずさりした。
「どうせまたくだらないこと言って、隊長怒らせたんだろうなぁ・・・・・・ってドア壊れてるし!」
「ウスイサン、よっぽど怒ったのねー」
ドアを蹴り外したのはルークで、破壊したのは笛吹なのだが、この状況を見ただけでそんなことが判るはずも無く。
ブレイズは、あの小心者の隊長がルーク相手とは言えここまでやるなんて、熱で正常な判断を失っていないか、能力制御ができるのだろうかと、少し心配になった。
自分とリーの力を併せれば、たいていの能力者には負けない自信がある。
が、制御を失い暴走した能力者の相手は、なるべくご免被りたい。
しかも相手がSSランクの笛吹とくれば、そんな危険人物にリーを近づけたくなかった。
「リー、お見舞いはまた今度に・・・・・・」
ブレイズが肩の上の友人に言いかけたそのとき、床にのびていた男が徐に上半身を起こした。
そして、首をぐるりと回し、ごきごきと骨を鳴らす。
ブレイズはいつものように銀髪の青年に対し悪態をつこうと口を開きかけ、そのままフリーズした。
青年の身体から発せられる気配が、普段とどうも違うことに気付いたからだ。
シェダルのようなテレパス能力をブレイズは持っていないが、それでも察知できるほどの、劇的な空気の変化だった。
リーも動物のカンで違和感を感じとったのか、ブレイズの首に身を寄せ、ぶるっと震える。
少年と小動物が、傍らで固まっていることなど気にも留めず、銀髪の青年は大きく息を吸い、そして吐いた。
「やってくれやがったなウスイシノブ・・・!」
上げた顔には眉間のしわが無く、かわりに喜悦の笑みが浮かんでいる。
「今行くぞゴルアァァ!首洗って待ちやがれっ!!」
こうして、気絶したルークにとって代わって現われたもう一人の人格は、軽快な足取りで笛吹の部屋に姿を消した。
呆気にとられ、玄関の前で立ち尽くすブレイズとリーは、その後、部屋の奥から聞こえる叫びや破壊音を聞くことになる。
「ぱらららーーんとオレ様参上っ!そしてイヤッホーーイ!ウスイシノブ発見発見大はっけーーん!起きろ起きろ起きやがれ!」
「うー・・・・・・うっさい・・・・・・!眠りばな起こすなーー!」
「ウスイシノブがキレた!ひゃははははっ!」
「煩いと何度言えば判るんだルーク!」
「・・・・・・オレはルークじゃねーーって言ってるだろーーーーッ!?」
「あっ!・・・・・・何お前人のベッド壊してんだ・・・・・・いい加減にしろよ・・・・・・!」
「さっきオレ様の体に攻撃仕掛けたし返しだいっ!なんならそこの隅のそれをぶっ壊してやろうか??」
「やめろっ!俺のエウロパピクシーサボテンに手を出すな!!」
「えー、そう言われるとやっちゃいたくなるのが人の性なんだよねぇ、おっと足がすべったー!」
「うあぁぁぁあーーーっ!!」
「ひゃははははっ!すっげー、血を吐くような叫び!」
「・・・・・・」
「怒った?怒った?やるかコラ!?」
「・・・・・・ぞ・・・・・」
「え、なになに?」
「絶対許さねーぞルーーーークーーーッ!!」
「・・・・・・オレはルークじゃねーよパフィオぺディルムだーーーッ!!・・・・・・ってうぉ、ね、眠気が・・・・・・あのアホこんなときに、目ぇ覚ますなよなぁ!・・・・・・ま、待った!待った!ちょっとタンマ!ほらっ、オレ、いますっごい眠気で、ふらふらで、ま、まてーーっ!」
「待たん!」
部屋の奥から紫光が閃いたかと思うと、凄まじい破壊音と共にガラスの割れる音、銀髪の青年の叫びが小さく聞こえ、そして何も音がしなくなった。
リーはブレイズを見た。
ブレイズもリーを見た。
「おみまいが必要なのはルークさんなのー!」
「白髪はゴキブリ並の生命力持ってるから心配いらないよ!隊長も元気みたいだね!さ、帰ろうか!」
「みんな元気でよかったのー!」
外から聞こえてくる小動物の囀るような声に、笛吹は床に倒れこみながら「全然元気じゃない・・・・・・」とつぶやいた。
笛吹はこの後、シェダルによって発見されるまで床で気絶することになる。
熱は40度を超え、生死の淵を彷徨い、完全復活するのは5日後のことだ。
そのとき、ルークは笛吹から3度目の攻撃(制御された完全版)を喰らうことになるのだが、当の本人は現在、笛吹によって窓から外へ吹き飛ばされた挙句、500倍の重力をかけられ、寮の庭の地面にめりこみながら気絶している。
5日後の惨事の当事者二人が意識を失ったまま、今は静かに、火星は夜を迎えるのだった。
---おしまい---
笛吹が可哀想なエンディング。
なんかもうわけわかりません。