オレは転校初日、新しくクラスメイトとなる人間達に向かって偽りの自己紹介をした。

 軽く頭を下げると、数人が拍手し、すぐにクラス全員がそれに倣って大きな拍手を起こす。
 教室中の人間の視線に晒されながら、握り締めた拳にかいた汗が雫となって床に落ちるんじ ゃないかと心配した。
 びっしょり濡れた手とは対称的に喉は酷く乾き、心臓はオレの体の中でやけに大きく鼓動を 打っている。
 その振動は嫌になるほどリズミカルで、機械を通した世界に集中しようとする頭の中ををや たらめったらかき回し、ともあれば有象無象の毒気が跋扈する世界へオレを引っ張り込もうと する超感覚を解き放つべく、やっきになっているかのように感じられさえする。
 とにもかくにも窒息しそうで気分が悪かった。
 頭も窒息しそうだけど、生身も窒息しかけている。
 早鐘を打つ心臓をたしなめながら、超感覚のたずなを暴走しないようにしっかり握り直すと 、恐る恐る教室中に意識を広げた。
 ほんの少しだけ、頭の中がクリアになる。
 それは閉めきった部屋の窓を開けて空気を入れるような感覚。
 しかし入ってくるのは新鮮な空気ではなく、入り混じった雑念ばかりで。
 外の雑念に窒息しないように、解き放つ意識を制御しながらオレは観察を続ける。
 恐れていた嫌悪や侮蔑の雰囲気は見当たらず、どの人間も何故かオレに好意的な感情を抱い てくれている。
 今まで何度も転校を繰り返してきたが、こんなことは初めてだ。
 この学校にはすでにエイリアンハーフが一人いるらしいから、おそらくそれで慣れているの だろう。
 それよりも。
 オレは、一番オレにとって重要なキーワードを頭に思い浮かべると、教室中に張り巡らした 精神フィールドに検索をかけた。

 ヒットは・・・・・・ない。
・・・大丈夫だ、まだ、バレていない・・・!

 オレは笑みを貼り付けて、顔を上げた。

 蛍光灯の光が、機械を通した眼に眩しい。
 








        ・・・・・・・・・・・→→→→少年ヴィーナス